ずり… ずり…
知りたい。
その一心で体にまとわりつく布だけをそのままに、砂利の上を這い進んだ。
教えて。
一人にしないで。
あれはとても大きいやつだったけど、怖い感じはしなかった。
足音は遠くまで行ってしまったが、耳を澄ませばちゃんと聞こえる。
何もない自分が今すがれるものは、走り去ってしまったあの足音だけだ。
思い通りに動かない手足を必死に動かして、進む。
ただがむしゃらに音のするほうへ。
あの灯りを目指して。
ずりずり…カラカラ…
もどかしい。
もどかしいなぁ、この小さい手足がもどかしい。
もっと、もっと早く進まないと置いて行かれる。
もっと力強くつかまないと手を放してしまう。
手を伸ばしては草を掴み、足を踏ん張り石を蹴り、ただひたすらに進む。
進む。進む。進む。
この小さな手がもっと大きければ、もっと遠くを掴めるだろう。
この短い脚がもっと長ければもっと早く進めるだろう。
這いずる腹を砂利が容赦なくひっかいて、山のように折り重なった木の葉に頭が埋もれても、オレは止まることができない。
外に出てきてしまった以上、もう後戻りはできないということだけは、はっきりとわかっていた。
もう無我夢中でとにかくがむしゃらで、あの灯りのほうへ足音のもとへと、オレは進み続けた。
「ぅあ……っ」
進むごとに、今まで遠くに聞こえていた外の世界の音が大きくなって、オレの周りを取り囲む。
上からも下からも、後ろからも前からも、たくさん音がする。
音だけじゃない。
外の世界は一切の容赦なく、頭が破裂するほどの情報をオレの頭や体に叩き込んだ。
肌を刺す空気は手をちぎれるかと思うほど冷たくするし、固い地面を這いずるしかない体は全部痛い。
どうして、たくさんの音がするのかとか。
どうして、こんなに寒いのかとか。
どうして、こんなに痛いのかとか。
どうして…
ようやくみつけたあんたがそんなに暖かそうでまぶしく見えるのか。
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